アルルは砂糖の入った缶をつかみだすとスプーンですくい「これでもか!」と言うほど砂糖を入れた。
そんなアルルを見ながら、シェゾはぼんやりとさっきの質問について考えていた。
確かに、アルルがいた時はブラックが一番好きだった。
いつからだ?
いつから自分はカフェ・オ・レが好きになった?
たしか・・・・・・・
そこまで考えてシェゾは内心顔をしかめた。
あぁ、そうだ。
アルルだ。
こいつがいなくなってからだ。
こいつがいなくなって、何故か俺はそれまで心地よく感じていたブラックの『苦さ』が急に味気ないものに思えた。
だから、その時たまたま目についたミルクを入れて・・・・・・
カフェ・オ・レの甘さをいいと感じてしまった。
読んでいた魔道書を置き、シェゾは自分のカップに口をつけた。
甘い、ミルクの香りが口に広がる。
「やっぱりブラックの方が旨いな。」
カップのなかのものを飲みほして、もう一度注ぎなおす。
ミルクは、入れない。
――end
著:白螺
2008.8.25